下世話な表現特集の第2弾として Scheiße の慣用表現をいくつかご紹介します。ドイツ語の Scheiße は日本語の「くそ」よりも使われる範囲が広く、日常会話の中でかなりの頻度で登場しますが、下品であることには変わりないので時と場合をわきまえて使うようにしてください。
1)罵言
悔しさや怒りを表す Scheiße!「くそっ!」は代表的な用法ですが、それを言うのがはばかられる場合は
Scheibenkleister!
Scheibe!
と言い換えることができます。これでお上品になるわけではありませんが、少なくとも顰蹙を買う確率はぐっと低くなります。
逆に、Verdammte Scheiße! というと怒りがさらに強調されます。
他には
So eine Scheiße! こんなのってあるかよ!
So eine verflickte Scheiße! マジ、こんなのってあるかよ!
というのもあります。日本語訳は単なる例です。状況によっていろんな日本語の罵言に訳せると思います。
2)驚きを表す間投詞
Ach du Scheiße! というとネガティブな意味での驚きを表します。Du(君)という人称代名詞が入っていますが、聞き手個人のことを指しているわけではなく、Ach du Scheiße!でひとまとまりの間投詞で、形の変更がありません。Oh mein Gott!(英語 Oh my god!)などが神を指しているわけではないのと同様です。
Ach du Scheiße, schon wieder eine hohe Rechnung! なんだよ、またこんな高い請求書よこしやがって!
Ach Du Scheiße! Das ist aber mehr als gewöhnungsbedürftig! うおお?!それって慣れないとかいうレベルじゃないんだけど。
Ach du Scheiße, so spät schon! あら(おっと)、もうこんな時間!
Ach du Scheiße! Nicht du schon wieder! なんだよ、またお前かよ!(勘弁してくれよ)
3)主語や目的語として
次に頻繁な用法は「バカなこと」「まずいこと」「無意味なこと」「役に立たないこと」または「ウソ・虚言」という意味で間投詞ばかりでなく主語や目的語として使う用法です。
Was soll die Scheiße? まったく、なんだよこれ?/ これどうしろっての?
Ich will nicht mehr so eine Scheiße erleben! Ich habe die Schnauze voll! こんなことはもう経験したくないね。もうたくさんだ!
Da hat dir jemand eine Scheiße erzählt. それ誰かが嘘言ったんじゃないの?
5)慣用句
Scheiße bauen 大きな間違いをする、ばかなことをする
言葉通りの意味は「クソを建てる・作る」です。下の標識パロディーは Scheiße bauen を言葉通りにとって、「工事中」をもじっています。
aus Scheiße Geld machen 無用のものを売る、無価値のもので儲ける
言葉通りの意味は「クソから金を作る」
bis zum Hals in der Scheiße stecken 苦境に陥っている
言葉通りには「首までクソの中に浸かっている」という意味なので、いかにも困った、またはヤバい状況にいる感じがしますね ( ´∀` )
単に in der Scheiße sitzen(クソの中に座っている)とも言います。
jemanden aus der Scheiße ziehen 誰かを苦境から救う
これは先の慣用句の逆で、「だれかをクソの中から引っ張り出す」という意味です。
6)形容詞 scheiße
また小文字で scheiße と書いて形容詞として使う用法もあります。
etwas scheiße finden なにかを悪い・汚いと思う
scheiße aussehen 汚く(みっともなく)見える、汚い(みっともない)姿・なりである
7)Scheiß- 接頭辞
接頭辞として Scheiß- はほぼどんな名詞にでもつけられます。日本語ではクソ野郎やクソババアとは言っても、クソ天気やクソ本など「クソなんとか」はそれほど言わないのではないでしょうか。でもドイツ語ではなんにでも Scheiß- をつけてそれが気に入らない嫌なもの・人・事であることを表すことができます。
Scheißkerl クソ野郎
Scheißwetter クソ天気
Scheißmaschine クソマシン
Scheißcomputer クソコンピューター
みたいな感じです。
また、egal につけて下品に強調することもできます。
Das ist mir scheißegal! そんなのクソどうでもいいんだよ!
8)動詞 scheißen
sich in die Hose scheißen 怖がる
「ズボンの中にクソをする」が言葉通りの意味です。日本語でも「びびってちびる」みたいなことを言いますが、ドイツ語ではちびるのは小さい方ではなく大きい方ということなんですね。
それほど下品ではないように scheißen の代わりに machen を使うこともあります。
auf etwas scheißen = auf etwas verzichten, etwas ignorieren 放棄する、無視する
Auf dein Mitleid scheiß' ich! おまえの同情なんかいらねえよ!
Scheiß drauf! ほっとけ!そんなのどうでもいいよ!
besser als in die (hohle) Hand geschissen
「(空)手の中にクソをするよりはまし」が言葉通りの意味です。「どんなものでもないよりはまし」というニュアンスです。
9)Schiss = Angst
Schiss は scheißen を名詞化したもので、Angst(不安、恐怖)を下品に言い換えたものです。
Schiss (vor etwas / jemandem) haben = Angst haben (誰か/何かを)怖いと思っている
Schiss (vor etwas / jemandem) kriegen = Angst bekommen (誰か/何かを)怖いと思うようになる
などのように使います。
10)anscheißen / Anschiss
anscheißen は言葉通りには「クソをつける」という感じでしょうか。この動詞は「だます」という意味と「どやす、ひどく叱責する」という意味があります。
名詞 Anschiss の方は2番目の意味の方で使います。
Der Verkäufer hat mich angeschissen あの販売員は私を騙した
Ich lass mich nicht ständig von dir anscheißen あんたにどやされてばかりいたくないね
Ich hab vom Chef einen Anschiß gekriegt ボスにひどい叱責を受けた
11)bescheißen / Beschiss
この動詞は恐らく誰かに対して「Scheiße(悪いこと)をする」が原義かと思われます。意味は「だます、騙し取る」です。名詞 Beschiss は「詐欺」「だまし」のような意味です。
Die haben uns um hundert Euro beschissen あいつらは俺たちから100ユーロ騙し取った。
Das ist einfach ein Beschiss それは単なる詐欺だよ
12)Klugscheißer
klug(賢い)と Scheißer(クソする人)を組み合わせた言葉で「賢そうな Scheiße を言う人」つまり「知ったかぶり」を意味します。
「知ったかぶり」には他にも Besserwisser, Klugredner, Rechthaber などがあります。
知ったかぶりをすることは Klugscheißerei、動詞は klugscheißen です。
Habe ich schon genug Scheiße erzählt? ;-) クソについて(バカなことを)もう十分語ったでしょうか?( ´∀` )
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