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AutorenbildMikako Hayashi-Husel

「キレる、キレやすい、逆ギレ」はドイツ語でなんと言う?

ドイツ語ネイティブとの会話で、「言いたいことが言えない」というフラストレーションを抱えていませんか?こういうときにどう言ったらいいのか、知りたいドイツ語の表現はありますか?

このように私の運営するFacebookのドイツ語グループで質問を投げかけたら、たくさんの反応がありました。そこでの質疑応答をこれから数回に分けて、テーマごとに分けてご紹介します。

今回取り上げるのは、「キレる、キレやすい、逆ギレ」です。

どれも割と最近使われるようになった日本語表現ですので、和独辞典には載っていないか、違う意味のものしか載っていないことでしょう。


キレる

たとえば「キレる」はカタカナで書きますが、漢字で書く「切れる」であれば、「このナイフはよくキレる」や「あの人は頭が切れる」など、全然違う意味になりますよね?

カタカナで書く「カッとなる、怒る」という意味での「キレる」は現代用語辞典に載っているような新しい用法で、私がまだ日本に居た30年以上前にはなかった言葉です。当時は「プッツン切れる」「プッツンする」のような言い方が流行っていたように思います。

元は「堪忍袋の緒が切れる」で、この切れる様を「プッツン」という擬態語で表現するか、何が切れるのかをはしょって表現するかの違いですね。


では、「堪忍袋の緒が切れる」はドイツ語でどういうのでしょうか?

実はかなり絵的に似ている表現がドイツ語にあります。

jemandem reißt der Geduldfaden

Geduld(忍耐)の Faden(糸)が reißen 切れる、という言い方です。

「堪忍袋」のような「袋」ではありませんが、緒や糸は非常に類似していますね。


しかし、これは、我慢に我慢を重ねた末についに耐えられなくなって爆発するイメージですので、「キレる」というのとはちょっと違います。「キレる」の場合は別に「我慢の末」という条件が付いておらず、ただ単に怒りを爆発させる感じですよね?

この場合は、ausrasten という動詞がふさわしいです。はまっていたものが外れるというイメージの口語です。「タガが外れる」と日本語でも言いますよね。


in Wut ausbrechen という動詞も、「怒りを爆発させる」意味で使われます。

explodieren(爆発する)も同様です。

他にも回しすぎておかしくなるというイメージの口語で、durchdrehen という表現があります。これは、「平静さを失う」または「度を失う」ことを意味するため、必ずしも「怒り」ではなく、文脈によってはヒステリックになることやパニック状態になることを意味することもあります。


die Beherrschung verlieren などと言うと品のよい「自制心・平静さ・度を失う」というニュアンスになります。

die Nerven verlieren (神経を失う)も同じ意味です。

ほかには、Er schäumt vor Wut wie die kochende Milch(彼はすぐに怒りで煮立ったミルクのように泡を吹く)という面白い表現もあります。

vor Wut schäumen が「口から泡を吹くほど激怒する」という慣用句です。

日本語にも「口角泡を飛ばす」という表現がありますよね。ただし、日本語の場合は、怒りじゃなくて議論する様子を表していて、また、泡を吹くだけじゃなくて飛ばしてるので、もっと勢いよくがーがー言ってるイメージがあります。


また、怒りの爆発そのものは der Wutausbruch と言います。

der Jähzorn もほぼ同じ意味で、突然の怒りの発作を表しています。


キレやすい

「キレやすい」という性質描写であれば、

Er verliert leicht/schnell die Beherrschung.

Sie rastet leicht/schnell aus.

というように、先述の「キレる」という動詞または熟語に leicht(簡単に)や schnell(速く、すぐに)を追加することで表現できます。


Jähzorn の形容詞 jähzornig も「怒りっぽい」「キレやすい」という意味で使えます。


また、キレやすい人のことを昔日本語で「瞬間湯沸かし器」と言うこともあったと思いますが、それに対応するようにドイツ語では Schnellkochtopf(圧力なべ)と言うことがあります。蒸気がシューシュー勢いよく出て来ることから来る比喩表現で、湯気が出るイメージは日本語と同じですね。



逆ギレ

「逆ギレ」は、ドイツ語にするのは難しいです。

Weblio辞書には、逆ギレの定義として「相手損害や迷惑を与えており、その点で責めを受けてしかるべき者が、自分責められることに対す怒り露わにし、あたかも自分不当責められている被害者あるかのように振る舞うさま。キレられる側の者が逆にキレるさま。

責められることに耐え切れずにカッとなる様子は「逆上する」とも形容できる。

とあります。

この現象自体はドイツ語社会でも起こることなので、ドイツ語で説明することは可能です。例えば:

auf eine Zurechtweisung oder Kritik wütend reagieren, als wäre er oder sie selbst Opfer einer Ungerechtigkeit bzw. einer unberechtigten Kritik.(責めや批判に対して、不当な扱いや不当な批判の被害者であるかのように怒りを露わに反応する)

「逆上する」という激しさを加える場合は、wütend reagieren の代わりに

in Wut ausbrechen

außer sich geraten

などの表現ができます。

強いて一言で表すならば、Wutreaktion が適しているのではないかと思います。ただの怒り Wut なのではなく、反応 Reaktion としての怒り、というニュアンスです。


しかし、そういう人の様子を見て「え?逆ギレ?!」という場合、説明的に翻訳するわけにはいきませんし、「Wutreaktion?!」とするのも不自然ですので、どうしたらいいものか悩むところです。

やはり「逆に」という一方的ともいえる非難がましさをドイツ語では表現しないと言えます。というのは、そのような状況で考えられるセリフは単純に「(彼・彼女または君・あなたが)今度はカッとしちゃうんだ」的なものだからです。

例:

Jetzt wird er/sie wütend?! / Jetzt wirst du wütend?!

Nun bricht er/sie in Wut aus?! / Nun brichst du in Wut aus?!

Nun rastet er/sie aus?! / Nun rastest du aus?!


「逆ギレ」という言葉には、その人にはキレる正当な理由はないという非難が暗に込められていますよね?でも、どんなに悪いことした人であっても、どういう責め方をされてもいいということではないのではないでしょうか。例えば頭ごなしに怒ったり、その場にいる人間全員でその人を集中的に非難したり、誹謗中傷のような本来の悪い行為とは関係ない人格否定をしたり、度を超えて責め立てる人たちに対して、責めを受けた人が怒りを感じてはいけないのでしょうか?責め立てる側はどんなことを言っても正義なのでしょうか?違いますよね。度を過ぎれば、それはただの憂さ晴らしです。責めを受ける側の最低限尊重されるべき人権というものを無視した一方的な行為とも言えます。そういう場合は、「逆ギレ」する側に正当性があると言えるでしょう。

もちろん、人によってはほんのちょっとの批判にも耐えられずにキレてしまうという社会性のないこともあるとは思いますが、私は人に怒ったり批判・非難したりする前に、どうしてそういうことをするのか理由を聞くべきなんじゃないかと思います。


動画版はこちら。








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