1. Sehe ich danach aus?
意味: 私がそんなふうに(そんなことするように)見えますか?
例文: Und ich soll ihn niedergeschlagen haben, sehe ich danach aus, Herr Richter? (訳例:それで、私が彼を殴り倒したというんですか。私がそんなことするように見えますかね、判事さん?)
Sicher haben Sie selbst eine Frau. - Nein, sehe ich danach aus?(訳例:もちろんあなたご自身にも奥さんがいらっしゃるのでしょう。-いいえ、そんなふうに見えますか?)
Aus: Gerd Gaiser, "Die sterbende Jagd" (1953) 出典:ゲルト・ガイザー「滅びゆく航空戦(仮訳)」(1953)
解説: このフレーズは「aussehen nach ...(~のように見える)」という辞書通りの意味のままなので【慣用句】というには少々語弊があるかもしれませんが、日常会話の中の決まり文句として使い勝手がいいという利点があります。そのまま使えるフレーズですので、ぜひぴったりの状況がありましたら使ってみてください。
2. außen vor bleiben
意味: 蚊帳の外である、考慮されない、無視される 字義通りには「外の(門)前にとどまる」
例文: Ausschließlich Ärzte, Rechtsanwälte... spielen die Zentralrollen, und die Arbeiter bleiben außen vor.(訳例:医師や弁護士。。。だけが中心的な役割を果たし、労働者は蚊帳の外だ)
Die Mächtigen und die Cleveren sahnen ab, und die Interessen der breiten Bevölkerungsschichten bleiben wieder mal außen vor.(訳例:権力者や要領のいい者が甘い汁を吸い、大部分の住民階層の利益はまたもや無視されたままだ)
Keiner darf außen vor bleiben!(訳例:誰も蚊帳の外に置かれたままであってはならない!)
解説: 「außen vor」は特にドイツ北部に多い表現ですが、他地域でも使われます。 bleiben の代わりに sein を使うこともよくあります。 門前払いされて外にいるイメージが「außen vor」の語感に近いと思います。
3. etwas/jemanden außen vor lassen
意味: 考慮に入れない、無視する、除外する。 字義通りには「~を外の前に置いておく・放置する」
例文: Die Detailfragen wollen wir zunächst einmal außen vor lassen.(訳例:細かいことはとりあえず脇に置いておきましょう。)
Der Staat ist dabei an die Grundrechte gebunden und kann Ungeimpfte deswegen nicht ohne Weiteres außen vor lassen.(訳例:国はその際基本的人権を尊重する義務があるため、ワクチン非接種者をそう簡単に除外することはできない。)
解説: この慣用句は先にご紹介しました「außen vor bleiben(蚊帳の外に置かれる、無視される)」に対応する使役形です。 何かの議論の際に誰かまたは何かが考慮されるのか否かは常に重要な観点ですよね?特に政治的議論ではある集団(例えば子どもや障がいを持つ人、移民などのその国の言葉に不自由している人などの社会的弱者)のことが考慮されていないと場合によっては激しく非難されることになります。そういう文脈で頻繁に使用されるのもこの「außen vor」なのです。
もちろん vernachlässigen, ignorieren, nicht berücksichten, unberücksichtigt lassen, außer Acht lassen などと言い換えられますが、そうすると「außen vor」の持つ「外」を強調するパワーが失われ、やや心理的距離のある説明風になります。
4. außer sich geraten/außer sich sein
意味: 我を忘れる(geraten)/ 我を忘れている(sein) 字義通りには「自分自身の外に出る・居る」
例文: Ich geriet vor Wut über die Selbstgerechtigkeit dieser Menschen fast außer mich.(訳例:この人たちの独善主義に対する怒りで私は我を忘れた。)
Sie ist vor Freude ganz außer sich.(訳例:彼女は喜びのあまり我を忘れている。)
解説: この慣用句では sich(自分)と日本語の「我」がよく対応していると言えます。 「自分自身の外に出る」とは Selbstbeherrschung 自制心という囲いの外に出るをことを意味します。「タガが外れる」にも通じるものがありますね。 「我を忘れる」では理性や自制心の存在そのものを忘れてしまうことを指しますが、囲いの外に出ることと囲いの存在自体を忘れてしまうことのどちらが自失の度合いが高いのでしょうか?(笑)
5. etwas in Aussicht haben
意味: ~の見込み・予定がある。 字義通りには「~を見渡せる範囲(眺望・展望)の中に持っている」
例文: Wenn man eine Stelle in Deutschland in Aussicht hat, kann man ein Visum bekommen.(訳例:ドイツで就職口の見込みがある場合はビザをもらえます。)
Sie sind auf dem Weg nach Düsseldorf, wo sie einen neuen Job in Aussicht haben.(訳例:彼らは新しい仕事の見込みのあるデュッセルドルフへ行くところです。)
解説: Aussicht は基本的に高いところからあたりを見回すこと、またはその眺め・眺望のことを指します。そういうことができるポイントを Aussichtspunkt と言い、多くの観光客が同時に眺めを楽しめるように整備したプラットフォームを Aussichtsplattform と呼びますが、そのようなところから眺めた時にあるものが視界に入っていることを将来の期待のたとえに使っているのがこの慣用句です。 中核となる要素は「in Aussicht」で、これといくつかの動詞を組み合わせることができます。
余談ですが、写真はライン川を望むローレライから撮影したものです。2013年8月18日に撮影しました。非常に天気が悪かったのですが、ローレライに登った時は雨が上がってくれて、このような曇り空の風景を撮ることができました。
この「Loreley」の語源は実は「展望岩」です。Lore というのはライン川中流から下流にかけて話されている方言で luren (見る、眺める)から派生した語だと言われています。Ley は他の地名にもよく見られる語で、Lay, Lei, Lai などのバリエーションがありますが、「岩・岩盤・岩石」を意味しています。
「ローレライ」というと船頭を美しい歌声で惑わせる岩山にたたずむ美しい少女のイメージがありますが、語源を辿るとなんだか身もふたもないような意味なのですね。 上から見ると分かりませんが、川の方から見上げるとまさに岩の塊です。ここでライン川が狭く曲がるために急流で、また岩場が多いために、うっかり岩山に気を取られていると船が沈んでしまうような難所だったので、いつしかそこにセイレーンがいるというような伝説が生まれたのでしょうね。
また、川ではありませんが、北ドイツのオルデンブルクにはあたりを見渡すのにちょうどよい Utkiek という高台があります。これの語源も「展望」です。Ut は英語の out、標準ドイツ語の aus にあたる低地ドイツ語の言葉で、kiek は標準ドイツ語では gucken(見る)の派生語 Guck にあたります。Ausguck とは他でもない Aussicht のことなんですね。 こういう地名の付け方があることから、ローレライの「ローレ」が現地の「見る」を意味する lure に由来する説により説得力があるわけです。(もちろん反論がないわけではないのですが。)
6. jemandem etwas in Aussicht stellen
意味: ~に~を与える約束をする。 字義通りには「~のために~を見える範囲に置く」
例文: Das Unternehmen hat seinen Angestellten eine Gehaltserhöhung in Aussicht gestellt.(訳例:会社は従業員に昇給の約束をした。)
Die Corona-Soforthilfe, die ich bekommen habe, ist weit weniger als die ursprünglich in Aussicht gestellte Summe. (訳例:私が受け取ったコロナ一時支援金は当初約束されていた金額よりもずっと少ない。)
解説: すでにご紹介しました「in Aussicht haben」の使役バージョンとも言えるのが stellen(置く)を使ったこの慣用句です。 見える範囲に置くだけで相手の影響範囲ではないので、置いたものをまた取って見えなくすることもできるようなイメージがあるような気がします。versichern(確約する)に比べると大分不確定要素が強い感じですね。
「etwas in Aussicht stellen = etwas versprechen」という解釈が一般になされますが、「versprechen(約束する)」は 「sich versprechen(言い間違う)」を連想してしまうためあまりあてになる感じではなさそうだというのが私の個人的な感覚です。 Du hast es mir doch versprochen! Oder hast du dich nur versprochen!?(だってそう約束したじゃないの!それとも言い間違えただけだったの!?)
7. etwas in Aussicht nehmen
意味: ~を意図する、計画する。 字義通りには「~を見える範囲に受け入れる」
例文: Jetzt ist Juni oder Juli in Aussicht genommen, doch noch nicht vereinbart.(訳例:現在6月か7月にしようかという話だが、まだ合意はしていない。)
Wir hatten für unseren Ausflug drei bis vier Tage in Aussicht genommen, und jetzt war es eine Woche geworden. (訳例:私たちは3~4日の遠出をするつもりだったのだが、それが今では1週間になった。)
解説: nehmen も「in Aussicht」と組み合わせられる動詞の1つです。 日本語の「視野に入れる」と似た言い回しですが、意味は若干ずれます。「視野に入れる」は「未来の可能性・選択肢(の1つ)として(追加的に)考慮する」だけですが、「in Aussicht nehmen」はもっと具体的な計画、つまり「選択肢の1つ」をすでに取って(決めて)しまうことを意味します。
また、先日ご紹介しました stellen との違いに注意してください。「in Aussicht stellen」は誰かに何かを与えることを意図し、またそれを約束することを指します。 「in Aussicht nehmen」は何かを意図・計画するだけです。「与える」や「約束」の要素は入っていません。
ちなみに「視野に入れる」に相当するドイツ語はたとえば: mit bedenken als weitere Alternative berücksichtigen zusätzlich in Erwägung ziehen
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