1.sich in Acht nehmen [vor etwas]
意味: (~に)注意する、慎重にする。字義通りには「自身を注意(対象)に入れる」
例文: Nimm dich bloß in Acht! Die haben einen bissigen Schäferhund!(訳例:気を付けなよ!そこは噛みつくシェパード犬が1匹いるよ)
Man kann sich nicht immer vor allem Möglichen in Acht nehmen, das geht einfach nicht.(訳例:常にあらゆることに注意することはできない。それは無理というものだ)
解説: この慣用句は特にひねりがあるわけではなく、字義通りの意味から容易に推察できるものですが、sich nehmen という再帰動詞が日本人には馴染みにくいかもしれませんね。「自分を大事にする」というふうに解釈すると少し分かりやすくなるでしょうか。
2.sich vom Acker machen
意味: 立ち去る、逃げる。字義通りには「耕地・畑(または軍事演習場)から自身を離す」
例文: Ich mach' mich dann mal vom Acker!(訳例:じゃあ、まあ俺は帰る)
Mach dich vom Acker!(訳例:消え失せろ!)
解説: この慣用句は口語です。起源は、一説によると兵隊言葉で、Acker は畑ではなく軍事演習場を指し、そこから逃げるとはすなわち、ただのサボりではなく、Fahnenflucht 脱走・脱営と同義だったとのことです。
3.etwas ad absurdum führen
意味: ~を無意味なものにする、~の(主張の)矛盾を示す・証明する。字義通りには「~を不合理・不条理(なもの)へ導く」
例文: Was ich sehe, sage, höre, wird vom nächsten Morgen bereits ad absurdum geführt.(訳例:私が見たり行ったり聞いたりするものは、翌朝にはすでに無意味になる)
Die Stromexporte aus osteuropäischen Ländern können die Bemühungen um den Atomausstieg und den Klimaschutz ad absurdum führen.(訳例:東欧諸国からの電力輸出は、脱原発や環境保護のための努力を無に帰する可能性がある)
解説: ad absurdum はラテン語で、「不合理・不条理(なもの)へ」を意味します。ラテン語の入った慣用句ですので、これは「教養語」に分類されます。 「~の(主張の)矛盾を証明する」という意味を記載している辞書がありますが(小学館ポケプロ独和、小学館 独和大辞典)、この意味で使用されることはむしろ稀で、どちらかというと「無意味なものにする etwas sinnlos machen」「意味のなさを示す die Sinnlosigkeit von etwas aufzeigen」というニュアンスで使われることが多いです。 日常会話で使われることはあまりないと思いますが、新聞の論説や識者フォーラムでの議論などではよく登場する慣用句ですので、覚えておいて損はないと思います。使いこなせれば、「教養がある」と印象づけることができることでしょう。
4.etwas ad acta legen
意味: ~を解決済みと見なす、棚上げ・お蔵入りにする。字義通りには「~を他の書類と一緒にする」
例文: Entweder wir realisieren die Idee oder wir legen sie ad acta.(訳例:このアイデアを実現するか、それともお蔵入りにするか、そのどちらかだ)
Damit schien der Fall Jona ad acta gelegt.(訳例:これによってヨナ事件は解決したようだった)
解説: ad acta(書類へ)とはラテン語の法律用語で、案件に「a.a.」という略字を入れることで、それが解決済みであることを示しました。ラテン語の代わりに、それに対応するドイツ語 zu den Akten を使うこともあります。実際に書類に「a.a.」または「z.d.A.」と書く場合は、日本で書類に「済」印を押すような感じでしょうか。
この慣用句はラテン語を含むため、「教養語」に分類されますが、割と頻繁に使われます。
5.ad calendas graecas (zu den griechischen Kalenden)
意味: 無期限に。字義通りには「ギリシャ暦の1日に」
例文: Eine wirklich vernünftige Reform werden wir wohl erst ad calendas gaecas erleben.(訳例:本当に理に適った改革を私たちが体験することは永遠にないだろう)
Die Entscheidung über die Finanzierung des Projekts darf nicht ad calendas graecas verschoben werden.(訳例:プロジェクトの融資に関する決断を無期限に引き延ばしてはならない)
解説: この慣用句は ad で始まることでお分かりかとも思いますが、ラテン語です。対応するドイツ語を上のカッコ内に書きましたが、「ギリシャ暦の1日に」という意味です。Calendas はカレンダーの語源でもあり、毎月の1日を表し、ローマ帝国では支払期限も指していました。ところが、ギリシャ暦にはこの「1日」という概念がなかったため、「ギリシャ暦の1日」は永遠に来ないことになります。 このラテン語熟語は verschieben や aufschieben といった「引き延ばす、延期する」意味の動詞とともによく使われます。
6.eine Ader [für etwas] haben
意味: (~の)素質・傾向がある。字義通りには「(~の)血管がある」
例文: Sie hat keine Ader für Kunst.(訳例:彼女には芸術の素養がない)
Er hat eine komische Ader.(訳例:彼には滑稽なところがある)
Dass er eine künstlerische Ader hat, hat er schon früh gemerkt. Kein Wunder: Seine Mutter war Malerin.(訳例:彼は自分に芸術的素質があることに早くから気付いていた。彼の母親が画家であったのだから無理もない)
解説: この慣用句は、人間の性質が血またはそれが流れる血管と関係があると信じられていた時代に成立したものです。日本語でも「血は争えない」などと言いますよね。
7.sich an die richtige Adresse wenden
意味: 然るべき人・所に頼る。字義通りには「正しい宛先に自分を向ける(⇒問い合わせる・相談する)」
例文: Du musst dich mit dieser Sache gleich an die richtige Adresse wenden.(訳例:君、この件に関してはすぐに然るべきところへ相談しなきゃいけないよ)
解説: この慣用句は、Adresse「宛先・住所」を人や役所などの機関の比喩に用いた口語表現です。非常に一般的な言い回しなので「口語」という分類も少々疑問に思うくらいです。 この反対の現象は、an die falsche Adresse geraten(間違った住所に至る⇒当てが外れる)です。合わせて覚えておくと便利ですよ。
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